今回は、高村薫さんの「マークスの山」を紹介します。なお、この作品は、1993年上半期の直木賞を受賞しました。
~昭和五十一年秋、北岳の山麓で二つの事件があった。土木工事の飯場で登山者が土木作業員の岩田に撲殺された事件では、酒に酩酊した岩田が細部を覚えておらず、不審な点を残したまま起訴される。その三日前の事件では、夜叉神峠で男女が心中しており、子ども一人が奇跡的に助かった。
それから十三年後、飯場跡に近い山中で白骨死体が発見され、同じ場所で見つかった腕時計を証拠に再び岩田が殺人の罪に問われる。しかし、獄中で岩田は男から冤罪だと言われ再審請求を出すように耳打ちされる。その男は、自らを《マークス》だと言って高らかに哄笑した~
この《マークス》こと水沢が出所後に精神異常の殺人鬼となっていきます。この作品では、水沢の病的でひたすら透明な心理と、警視庁捜査第一課の合田が組織や家庭での悩みを抱えながら刑事として地道に働く生き様が対照的に描かれています。しだいに物語は加速し、結末は悲哀に満ちた、それでいて荘厳な光景でした。報われない世の中を痛感させられます。
PR